「エンパワーメント」とは?組織の生産性をアップさせる概念を解説!

現代の組織運営において、個々の能力を最大限に引き出し、全体の生産性を向上させるための手法として「エンパワーメント」が注目されています。
本記事ではそんなエンパワーメントの基礎と、その具体的な手法、効果まで解説していきます!

 

1. エンパワーメントとは?

エンパワーメントは、英語の「empowerment」を由来とする言葉で、「権限を与える」、「能力を向上させる」という意味を内包しています。
特に組織運営におけるエンパワーメントは、個々の従業員に対する自由度と責任の付与、それによる能力の最大化という観点から捉えられます。
職務範囲を超えた意思決定や問題解決に従業員自身が取り組む機会を提供することで、それぞれの従業員が自己成長を遂げ、組織全体としての生産性向上に寄与する手法を指すのが特徴です。

エンパワーメントの背景

エンパワーメントの考え方は、従来の上から下への一方通行の指示型マネジメントからの脱却を目指す、現代の組織運営において重要な手法となりました。
この背景には、多様な価値観やアイデアが組織のイノベーションを生み出す力となるという認識があります。従業員一人ひとりが主体的に行動することで、組織全体の活力や創造性が増すという考えから注目されているのです。

 

2. エンパワーメントの実践手法

闇雲なエンパワーメントは現場の混乱を招き、ビジネスの破綻にも繋がり得ます。
それではどういった形でこの手法を定着させれば良いのでしょうか?それには主に3つの方法が考えられます。

コミュニケーションの強化

コミュニケーションはエンパワーメントにおいて不可欠な要素です。
組織のビジョンや方針を従業員に明確に伝え、それに基づく行動を促すためには、オープンで透明なコミュニケーションが必要です。
例えば、Googleでは「TGIF(Thank God It’s Friday)」という週一の全社ミーティングを開催し、最高経営責任者が直接会社の更新情報を伝え、従業員からの質問に答えることで、開かれたコミュニケーションを維持しています。

教育とトレーニングの提供

教育とトレーニングは、従業員がスキルを向上させ、自己成長を遂げる上で欠かせない要素です。
スキルを磨くことで、従業員は自分のポテンシャルを最大限に引き出すことができます。
具体的な事例としてAppleが挙げられます。
同社では新入社員を対象とした独自のトレーニングプログラム「Apple University」を実施しています。このプログラムを通じて、社員はアップルのビジョンやビジネス哲学を理解し、自己成長を遂げることができているのです。

職務範囲を超えた業務への参加機会の提供

職務範囲を超えた業務への参加機会を提供することで、従業員は新たな視点やスキルを得ることができます。
また、自身の可能性を広げ、組織への貢献度を高める機会も生まれます。
日本のあるリクルート企業では、社内の異なる事業領域に参加できる「リクルートチャレンジ」という制度を設けています。この制度を通じて、社員は新たな経験を積み、自身の成長とともに組織の発展に貢献しています。

 

3. エンパワーメントによる組織への効果

エンパワーメントの効果は多岐にわたりますが、中でも顕著なものとして、個々の従業員のモチベーションの向上、自己成長の促進、そして組織全体の生産性の向上が挙げられます。

モチベーション向上と自己成長

エンパワーメントにより従業員は、自身の裁量と責任範囲が広がるとともに、自分の行動が組織の成果に直接影響を与えることを理解します。
その結果、仕事に対するモチベーションが向上し、自己成長を遂げる機会も増えます。
具体的な事例として、世界最大のフードサービス企業であるマクドナルドは、レストランのマネージャーに十分な裁量権を与えることで、彼らが自身の判断でレストランを運営し、より良いサービスを提供するようにモチベーションを引き上げています。

組織全体の生産性向上

エンパワーメントは、組織全体の生産性を高める重要な手段でもあります。
従業員が自主的に行動し、新たなアイデアや改善策を提案することで、組織全体のパフォーマンスが向上します。
世界最大の小売業者であるウォルマートは、エンパワーメントを通じて、店舗ごとの従業員が独自の施策を立案することで、全体の売上向上に寄与しました。

 

4. トップダウン型マネジメントから生まれないアイディアの想像

エンパワーメントは、組織運営において革新的なマネジメント手法を提供します。従来のトップダウン型のマネジメントとは異なり、エンパワーメントはボトムアップ型のアプローチを奨励し、従業員が自己のアイデアと解決策を提供するのを後押しします。

トップダウン型とボトムアップ型の比較

エンパワーメントが推奨するボトムアップ型のマネジメントは、従業員が自身のアイデアを提案し、その実行に関与する形を取ります。これにより、より具体的かつ効果的なアイデアが生まれ、組織全体の改善につながります。
一方で、トップダウン型のマネジメントは、上層部が全体的な指示を出し、それが下層に伝えられていく形を取ります。これには明確な指示と戦略が伝達され、組織全体の方向性が確保されるという利点があります。
どちらかの型に極端に傾倒するのではなく、両方のアプローチを適切に組み合わせることで、組織の成功を最大化することが可能となります。

Googleから学ぶ具体的な活用

テクノロジー企業の「Google」が有名でしょう。
Googleでは、エンジニアに対して20%の時間を自由に使うことを許可(通称「20%ルール」)しています。
これはエンパワーメントの一環であり、エンジニアはこの時間を利用して新たなプロジェクトを開始したり、新しい技術を学習したりします。
この制度が導入されてから、GoogleドキュメントやGmailなどの革新的なサービスが生まれ、大きな成功を収めました。この例からも、エンパワーメントがマネジメントに革新をもたらすかがわかります。

 

5. メリットだけではない大きな課題

エンパワーメントは組織とその従業員に多くのメリットをもたらしますが、それは同時に適切な実装と管理が伴ってその効果が発揮されます。
能力向上や生産性向上といった効果を期待する一方で、これらの戦略の誤った導入や管理は、組織に混乱を招く可能性があります。特に、従業員のニーズが十分に理解されていない場合には問題が発生しやすいです。

教育とトレーニングの必要性

エンパワーメントを実現するためには、個々の従業員が自己決定を行い、効果的に問題解決できるようにするための適切な教育やトレーニングが必要です。
これらが不十分な場合、従業員は自分の役割や責任について混乱し、それが組織全体の効率性を損なう可能性があります。

従業員のニーズの理解

また、全ての従業員が自己成長や自己実現を望むわけではありません。
いくつかの研究によれば、一部の従業員はより指示された業務を遂行することを好む傾向があります。そのため、エンパワーメントの取り組みは、従業員の個々のニーズや希望、キャリア目標を理解し、それに基づいて対応することが重要です。
概念だけを導入してもそれを支持する従業員がいなければ、エンパワーメントの強みであるモチベーション向上や独創的なアイディアの想像はありえません。
適切な教育と従業員の理解、それが適切に行われたとき組織に大きな恩恵をもたらす可能性があると言えるでしょう。

 

まとめ

エンパワーメントは、組織の生産性向上や新たな価値創出の手法として注目されています。
その適用には、明確なビジョンの共有、教育・トレーニングの提供、失敗を許容する風土づくりなどが重要です。各組織は、自身の目指すべき方向性を見据え、エンパワーメントを適切に活用することで、新たな成長を達成できるでしょう。